大相撲の力士といえば、昭和の時代は、中学を卒業したばかりの若者が入門するイメージでしたが、最近では少し変化してきています。
中卒力士は現在は何人いるのでしょうか?
「中卒たたきあげ」と新聞などで耳にしますが、どういう意味なのでしょうか?
中卒で大相撲に入門するメリットやデメリット、さらには、現在の力士の最終学歴分布についてもご紹介します。
どうぞ最後までお付き合いくださいね。
中卒力士一覧!中卒力士は何人?
2024年11月現在、中卒力士は11人。
関取の人数は、十両28人、幕内42人、合計70人なので、中卒力士は少数派であることがわかりますね。
それでは、中卒の力士、特に、関取と呼ばれる十両と幕内の力士をご紹介しましょう。
それぞれの力士については、別の記事で詳しくご紹介していますので、そちらも合わせてご覧くださいね。
・輝(かがやき):金沢市立西南部中学校(石川県)
・佐田の海(さだのうみ):熊本市立西原中学校(熊本県)
・島津海(しまづうみ):西之表市立種子島中学校(鹿児島県)
・湘南乃海(しょうなんのうみ):大磯町立大磯中学校(神奈川県)
・隆の勝(たかのしょう):柏市立西原中学校(千葉県)
・高安(たかやす):土浦市立土浦第一中学校(茨城県)
・千代丸(ちよまる):志布志市立志布志中学校(鹿児島県)
・錦木(にしきぎ):盛岡市立米内中学校(岩手県)
・平戸海(ひらどうみ):平戸市立中部中学校(長崎県)
・明生(めいせい):瀬戸内町立篠川中学校(鹿児島県)
・竜電(りゅうでん):甲斐市立竜王中学校(山梨県)
中卒力士の出身地はさまざま。首都圏出身者もいれば、地方出身者もいます。
中学卒業後に力士になる道を選ぶ人は、地理的な理由というよりも、本人の意思なのでしょう。
中卒「たたき上げ」って、なに?
「中卒たたき上げ」とは、中学卒業後に大相撲界に入門し、相撲の基礎を学び、下積みから努力して一人前の力士になった人のことをいいます。
大相撲界に入門すると、まずは「序ノ口」という番付になります。
その後、勝ち越しや優勝など、よい成績を残すことができれば、「序二段」「三段目」「幕下」という番付を経て、「十両」「幕内」という力士としては一人前の「関取」になることができます。
相撲部屋で親方や兄弟子などと生活を共にしながら、いちから相撲の基礎を教えてもらい、一歩一歩、一番一番、勝ちを重ねていく。そして、一人前である関取になった人のことを「中卒たたき上げ」というのです。
たたき上げの対極にあるのが、「〇〇大卒のホープ」などと言われる力士です。
最近では、大の里がその筆頭ですね。
二所ノ関部屋に入門した時から、その活躍を期待されていました。
なぜ、入門した時から「活躍を期待」されているのか?
それは、大学時代に大きな成績を残していて、世間の注目を浴びているからです。
大の里は、大学一年の時に学生横綱に、大学三年と四年の時に、アマチュア横綱になっています。
大学卒業後に二所ノ関部屋への入門が決まった時には、とっても話題になりましたね。
大の里のような人を「ホープ」と呼びます。
中卒力士とは、入門時はもちろん無名、大相撲界で腕を磨いてきた力士のことを言います。
高卒たたき上げもある?!
「高卒たたき上げ」の力士もいます。
高卒たたき上げは、中卒たたき上げに比べて、さらに少数派です。
高卒たたき上げとは、高校卒業までにそれほど目立った成績をだしておらず、未経験に近い状態で角界に入門することを指します。
二子山部屋(ふたごやまべや)の生田目(なばため)は「高卒たたき上げ」です。
生田目の経歴を知ると、高卒たたき上げについてよくわかりますので、ご紹介しますね。
生田目が相撲を始めたのは、高校生になってから。
中学では、野球、卓球、水泳、吹奏楽などをやっていて、相撲はやったことがありませんでした。
高校から始めた相撲ですので、3年間で大きな結果を出すことはできませんでした。
それでも、二子山親方(元大関 雅山)は、生田目の才能を見抜いていたんですね。生田目を熱心に口説いて、大相撲の世界へと導きました。
2020年の初土俵から約4年、2024年7月場所では十両に昇進し、関取となったのです。
最近では、高校や大学で活躍していた力士が相撲界でも活躍していますが、その中で、未経験から関取になれるのは、やはり実力があったということですね。
そして、地道にやる続けることができるのが、生田目の強みだと私は考えています。
実績がなくても関取に上がる姿を見て、後輩たちが大相撲に入ってくれたらうれしい。
(引用:2024年7月10日付 東京新聞 TOKYO Web)
いつからでも関取になれる!ということを生田目は教えてくれています。
道を切り開いてくれる人がいれば、その後に続いてくれる人も出てくるはずです。
そのようにして、相撲界が盛り上がっていくことを、相撲ファンの私は心から願っています。
生田目については、こちらで詳しくご紹介しています。合わせてどうぞ。
中卒で入門するメリットはあるの?
中卒で入門するメリットは、早く昇進できる可能性があること、そして、変なクセがつかない、ということです。
どういうことか、ひとつづつ説明しましょう。
まず、早く昇進できる可能性がある、について。
高卒で入門する力士より3年早く、大卒で入門する力士より7年早く、大相撲界に入門するわけですから、時間的なアドバンテージがあるのはわかりますね。順調に勝ち進んでいければ、大関や横綱に早くなれる可能性もあります。
現在の大関 琴櫻の祖父で元横綱 琴櫻は、高校に進学したことを後悔していて、大相撲界に入門するのは、早ければ早いほどいい、と言っていたことは、よく知られています。
次に、変なクセがつかない、についてですが。
相撲の名門高校や名門大学で、しっかりと指導してもらえれば、この心配はありませんが、そうでない場合は、自己流のクセがついてしまうことがあります。
大相撲に入門したあとに、クセを修正するというのは大変なことなんです。
力士本人の個性や特性などを生かした稽古、指導などが受けられない場合は、若いうちに相撲部屋に入門し、大相撲のプロである親方から指導してもらう、というのが、力士本人の能力を伸ばす近道ともいえるのです。
中卒で入門するデメリットは?
中卒で入門するデメリットは、セカンドキャリアへのハードルです。
力士は大相撲全体で約600人いますが、そのうち関取と言われる十両以上は70人。
関取になれるのは、約1割と狭き門なのです。
関取になれずに大相撲界を去る力士はたくさんいます。
怪我や成績不振など理由は人それぞれですが。
関取になった人でも、一般的に力士の現役生活はそれほど長くはありません。
40歳まで力士として、活躍できる人は少ないですね。
その後、日本相撲協会に残ることができればいいですが、残れない可能性もあります。
関取でも、関取じゃなくても、相撲界を去ったあとに何をするのか、を考えた時に、中卒と大卒では、選択肢が変わってくると私は思います。
中卒は不利なのか?
といえば、必ずしもそうではありません。(見出しに反する感じですが。。)
力士としての時間を過ごすなかで、相撲以外の何かを見つけることもあるでしょうし、相撲に関連する仕事に就く可能性もあります。
横綱になって、引退後は日本相撲協会に残る、というのが、力士の目指すところだと思いますが、もうひとつの選択肢を探してもいいのではないか、と私は思います。
大相撲という日本の伝統文化を担ってくれた力士ですから、その後の人生も輝くものであってほしいと思います。
力士の学歴の傾向は?
2024年11月現在の力士は大学卒がすべての学歴の中で一番多いです。
十両、幕内力士の学歴内訳をご紹介しましょう。
大学卒:29人
大学中退:4人
高校卒:24人
高校中退:2人
大学卒の力士が多いのは、どんな理由があるのでしょうか。
中卒で大相撲界に入門するメリットは前出の通り、早く昇進できる可能性があるというものですが、大学卒のメリットもありそうですね。
大学卒のメリットは
・大学で自分の興味のある勉強をすることができる
・大学時代に相撲で良い成績を残すことができれば、「付出」(つけだし)の資格を得ることができる
相撲にしっかりと取組みながら、学業を修めることができるので、相撲だけではない、幅広い視野を持つことができるということです。
「付出」(つけだし)というのが、のちに大相撲界に入門した時に、その後の昇進のスピードに深く関わってくるのですが、それについて、ご紹介しましょう。
付出とは?
2024年11月現在、「幕下最下位格付出」「三段目最下位格付出」の二つがあります。
大相撲界に入門した力士は通常、「序ノ口」という番付から始まり、「序二段」「三段目」「幕下」という順番で番付をあげていきます。
例えば「幕下最下位格付出」の力士は、入門した時に、序ノ口、序二段、三段目は飛ばして、いきなり幕下の番付から始められる、という資格なんです。
これは、かなりのアドバンテージですよね。
「付出」の資格を得るには条件があります。
幕下最下位格付出を得るには
・国民スポーツ大会相撲競技:青年の部個人ベスト8以上
・全国学生相撲選手権大会:個人ベスト8以上
・全日本相撲選手権大会:個人ベスト8以上
三段目最下位格付出を得るには
・全国高等学校総合体育大会相撲競技大会:個人無差別級ベスト4以上
・国民スポーツ大会相撲競技:成年の部個人ベスト16以上、少年の部個人ベスト4以上
・全国学生相撲選手権大会:個人ベスト16以上
・全日本相撲選手権大会:個人ベスト16以上
つまり、全国的に「強い!」と評判の選手に与えられる特権ということです。
言い換えれば、三段目や幕下の力士というのは、それ相応の強さを持っているということなんですね。
相撲部屋に入門し、そこに辿り着くのか、高校や大学でそこに辿り着くのか。
どちらの道を選ぶのかは、力士ひとりひとりの生き方や価値観、家庭環境などによるということですね。
中卒力士一覧のまとめ
・中卒の力士は、関取では11人です。
・「中卒たたきあげ」とは、師匠のもとで一から相撲の稽古に励み、関取となった人のことです。
・2024年11月現在の力士の学歴は、大学卒が29人と一番多いです。
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